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アトリエぱおとはBlog

イラスト:リンゴ

イラスト:絵具と人物

プチクラスキッズクラス・ジュニアクラス 2022.07.22

プチクラス「ものがたりのえ」

こどもクラス担当 浅原です。

今年はプチクラスで物語の絵を描きたいと思ったのです。

たくさんの絵本や短編を読み漁りました。こどもたちが2022年に描くのにふさわしい物語を探して。


そしてたどり着いたのが、この「おちゃのじかんにきたとら」

 

この絵本を選んだ理由は3つあります。

1つめは、発案者の私と私の息子と娘が小さい頃にこの絵本が大好きで、何十回と読んであげていたから。


2つめは今年が寅年だということ。


3つめはロシアとウクライナの戦争が始まったから。


この絵本を毎日のように読んでいた十数年前はあまり考えませんでしたが、戦争が始まってから読むとずいぶんと意味が変わって感じました。

今読むべきお話だと思いました。

作者はジュディス・カーという女の人です。3年前の2019年に亡くなりました。

生まれたのはドイツです。
当時は第2時大戦の真っ最中。

ドイツはナチスが勢力を増していて国内のユダヤ人排除が日増しに激しくなっていました。
ユダヤ人であったジュディスとその家族は、ナチスに捕まりそうになったため、国外に逃亡しました。大急ぎで逃げたので、ジュディスはウサギのぬいぐるみだけしか持っていけなかったそうです。(このあたりは映画「ヒトラーに盗られたうさぎ」にもでてきます)
その後ジュディスはスイス、フランスと引っ越しを繰り返し、イギリスに落ち着きました。

そして絵本作家になりました。


彼女の作品はこの戦争体験が大きな影響を与えています。

大きなもの、強いものがやってきたときにどう振る舞うのか?
自分とは異なる者とどうコミュニケーションをとるのか
善意とは何か? 礼儀とは何か?
アクシデントがあったときにどう挽回するのか?
など、いろいろな解釈ができます。

このお話は作者がナチスの迫害を受けているため、背景には戦争があります。
今のこどもたちがそれらを理解する必要はありません。

(ウクライナの戦争は日々ニュースで流れて目にしていますので、思った以上に理解しているのかもしれませんが)
ナチスや戦争のことは大人になるに従って自然に理解できるようになります。


今は、なんでトラさんは帰っちゃったんだろうね?

なんで、もうきてくれないんだろうね?

なんでお母さんたちは怖いとらを家に入れてあげたのかね?

なんでトラはお母さんやソフィーを襲わなかったのかな?

〇〇ちゃんなら、トラが来たらどうする? ドアを開ける? 開けない?
など、いろいろと話してみましょう。いろいろな解釈ができるお話です。


こどもたちが大きくなって大人になって、歴史を学んで、自分の子どもにこの絵本を読み聞かせているときに、きっといろいろなことに気づくことができるでしょう。
そしてこの話に込められている、平和や家族やもっといろいろなことを親子で考えられるようになると思います。

わたしは、食べるものが何もなくなってしまったのに、「いい考えがあるよ、みんなでレストランに行こう」と、大変な夜を楽しい夜に変えたお父さんに、父親とはこうでないといけないよ、と言われたような気がしました。

興味のある方はジュディスの自伝小説「ヒトラーに盗まれたももいろうさぎ」や映画「ヒトラーに盗られたうさぎ」もご覧になってみてください。

映画はプチクラスの子たちにはまだ難しいかもしれませんが、小学生ならもう理解できると思います。

 

 

このレッスンの様子はブログでも紹介しています。

https://www.a-pao.com/18197/

 

こどもクラス 浅原裕貴